セラヴィの玄関にある
ステンドグラスの扉を開けると、
道の向こう側に
一本の大きな松の木が見えました。
いつのまにか、
こんなにも大きくなって、
電線よりも高くなって。
そして、この夏あたりから
枯れはじめ
すっかり茶色になって
今日、
その松の木がなくなりました。
40年以上という、
長い長い歳月。
ホテルを訪れる無数のお客様の想いや、
移り変わっていく時代を、
この松はずっと見守ってきたのでしょう。
建物の前に立ち、
そこにいるのが当たり前のように、
いつしか私たちの日常の風景に
なっていました。
松の木には、神が宿り、邪気を払うとも言われています。
その木が枯れることには、
「守護としての役割を全うした、
木からの卒業のサイン」
という意味もあるそうです。
悲しいけれど、
「お疲れさま」
そう声をかけてあげました。
そもそも、この松。
もともとは、
管理人が枯らしそうになっていた
小さな盆栽の松でした。
少しの間だけ、と
仮置きするような気持ちで植えたものが、
気がつけば、
見上げるほどの大きな松に
なっていました。
玄関の目の前ですから、
毎日見ているはずなのに。
毎日少しずつの成長は、
あまりにも自然すぎて、
かえって気がつかなかったのかもしれません。
そう考えると、
本当に不思議な松でした。
小さな盆栽だった松が、
40年以上もの間、
セラヴィを見守る存在に
なっていたなんて。
そして今日、
その姿がなくなって、
残った切り株を見てみると、
「もっと太いと思っていたのに・・・」
と思うほど、
きれいな切り株でした。
虫に食われた跡もなく、
中まできれいな木肌。
思わず手をふれて、
「ありがとうございました。」
と、もう一度。
胸がキュンとしました。
今日からは、
そこに松の木はありません。
けれど、
長い年月の記憶は
きっとこの場所に残っていくのでしょう。
あの松を見ながら
玄関を出入りしたお客様。
その姿を毎日見ていた私たち。
そして、
何も言わずに
ずっとそこにいてくれた松。
そこにあることが、
当たり前だった松。
その「当たり前」のうしろには、
40年以上という歳月と、
何も言わずに見守り続けてくれた
強さと優しさありました。
当たり前の日々を
支えてくれていたことに、
今ごろなのだけど。
本当に、
いまごろなんだけど。
長い間、
セラヴィを見守ってくれて、
本当にありがとうございました。
こころから、感謝しています。
