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こころ残り

昨日、チェロをお持ちのお客様が
お泊まりくださいました。

朝食後の、
まだ誰もいないレストランで、
お客様がチェロを
奏でていらしたそうです。

・・・と申しますのも、
実はフロント係の管理人の頭の上には、
BGMを奏でるスピーカーがついております。
それが、ちょうどよい具合に・・・
お客様のチェロの音と
BGMが重なってしまい、
管理人、
まったく気がつきませんでした。
なんということでしょう。

その後
チェロをお持ちになってお庭でと
フロント前を通り外に行かれるとき
管理人は、初めてそのチェロを
目にしたのです。

「あら……」
よく見るチェロより
少し小ぶりで、
なんとも美しい形。
艶やかで、
とても素敵なチェロでした。

少しお伺いしてみますと、
なんと18世紀前半のものだそうで、
弦も昔ながらの
羊の腸を使ったものだとか。
弓も、
昔の形状をそのまま再現されたものだそうです。

もう、
「すごい……」
「素敵ですね……」と、
ただただお話を伺いながら、
管理人の目は
そのチェロに釘付け。
離れません。

金属弦とはまた違って、
きっと、
やさしくて、
深みがあって、
あたたかな音色だったのでしょうね。

セラヴィのレストランでは、
むかし、定期的に演奏会をしておりました。
音がよく響くので、
「ここで弾くと、
特別な音になります」と、
演奏される方が
喜んでくださっていたことを思い出します。

木が音を受けとめ、
やわらかく響かせて、
より深みのある、
あたたかな音色になるのでしょうか。

この特別のチェロが
セラヴィのレストランで鳴ったら、
どんな音になるのかしら。

聞いてみたい。
ものすごく、
聞いてみたい。

お客様がお外で
弾いていらっしゃるときも、
管理人、
玄関ドアから耳をダンボのようにして、
そーっと聞いておりました。

ところが、
こんなときに限って
電話が入り……
また聞けず。

あーあ。
なんということでしょう。

できることなら、
セラヴィのレストランで
弾いていただいた音色を、
ほんの少しでも
聞いてみたかったです。

きっと合うに決まっています。
ぜったい、
素敵に決まっています。

そして、お客様が、
「ストラディバリウスほどではありません」
とおっしゃいまして……。

管理人、
うっとりが、
少しドキドキに
変わりました。

そうですよね…。
やっぱり…そうですよね。

もっとお話を伺いたい。
もう少し、
そのチェロを見ていたい。
できることなら、
もう少し近くで眺めてみたい。
かなうなら
触れてみたい。

そして、
許されることなら……
「少しだけ、
弾いていただけませんか」
なんて、
そんなお願いまで
してみたい気持ちでいっぱいです。

でも、
気がつけばチェロは
もうケースの中。
チェックアウトの時間です。

また、
タイミングを逃してしまった管理人です。

それでも、
聞きたい。
セラヴィのレストランで、
ほんの少しでいいから、
あのチェロの音を
聞いてみたい。

お見送りをしながら、
こころのこりが
どーっと押し寄せてきました。

でもね。
また来てくださるかもしれません。
素敵なチェロを持って。

そのときこそ、
今度は少しだけ勇気を出して、
「よろしければ、
少し聞かせていただけませんか」と、
お願いしてみたいと思います。

こころのこりは、
次の楽しみの種。

やり残したことは
大切に大切に、
胸のポケットに
しまっておきましょう。

そして、
ふとしたときに
そのポケットを開けて、
「あのチェロ、
また聞けるかしら」
なんて、
ひとりでニンマリ(#^.^#)

待つお仕事も悪くないですね♪

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